01 2013
再生可能エネルギー / マイクログリッド Renewable energy / Microgrids
Game Theoretic Receding Horizon Cooperative Network Formation for Distributed Microgrids: Variability Reduction of Photovoltaics
Journal of Control, Measurement, and System Integration · 2013
太陽光発電の出力は雲の移動によって短時間に大きく変動しますが、離れた場所の変動が常に同時に起こるわけではありません。本研究では、複数の分散型マイクログリッドを必要に応じて協調させ、太陽光発電の時間的・空間的な変動を抑えながら、電力融通に伴う送電損失も小さくする制御方法を提案しました。将来の状態を見ながら制御を繰り返すReceding Horizon Controlとゲーム理論を組み合わせ、各マイクログリッドが自律的に協力関係を形成できる仕組みを構築しています。実日射量データを用いたシミュレーションにより、広域に分散した太陽光発電を一つのシステムとして扱うことの有効性を示した、後のPV分散配置研究にもつながる初期の成果です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSにつながる衛星日射量推定システムによる実日射データを、分散PVの変動評価と制御シミュレーションに利用。
02 2015
陸面 / 水文 Land surface / Hydrology
1-km-resolution land surface analysis over Japan: Impact of satellite-derived solar radiation
Hydrological Research Letters · 2015
地表面に届く太陽放射は、地表温度だけでなく、蒸発散、積雪融解、河川流出など陸面のエネルギー・水循環を左右する重要な入力値です。本研究では、日本全国を1 km格子で扱う陸面モデルに衛星から推定した日射量を入力し、その効果を検証しました。地上観測に基づく従来の放射量推定と比較すると、衛星日射量を用いることで正味短波放射だけでなく、長波放射、顕熱・潜熱フラックスの再現も改善しました。全国規模の解析では、日射量の違いが地表面の熱収支に大きく影響し、積雪地域では融雪時期を通じて流出量にも影響することが示されました。衛星から得られる高解像度の日射情報が、単なる日射量データにとどまらず、陸面の熱・水循環を記述する基盤データになり得ることを示した研究です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSの放射量推定の基盤となるEXAMによる衛星推定日射量を、1 km陸面解析の入力データとして利用。
03 2016
再生可能エネルギー / 配電制御 Renewable energy / Grid control
Voltage Control Method Utilizing Solar Radiation Data in High Spatial Resolution for Service Restoration in Distribution Networks with PV
Journal of Energy Engineering · online 2016 / issue 2017
太陽光発電が大量に接続された配電網では、事故発生時にPVが一斉に停止し、系統復旧後に再接続することで、従来とは異なる大きな電圧変動が生じる可能性があります。本研究では、事故後の配電系統復旧時にPV出力を高空間分解能の日射量から推定し、復旧後に生じる電圧を事前に予測して、変圧器や電圧調整器のタップ位置を制御する方法を提案しました。実際の地理情報に基づいた配電系統モデルと、1 km級の実日射量データから作成したPV出力分布を用いたシミュレーションでは、地域ごとの日射状態を細かく把握することが電圧逸脱の防止に重要であることが示されています。衛星日射量の「空間分布」を電力系統の制御へ利用するという、AMATERASSの特徴をエネルギー工学へ直接結びつけた研究です。
AMATERASSとのつながり 高空間分解能の日射量分布からPV出力の地域差を推定し、配電系統の電圧制御に利用。
原著論文を見る ↗ DOI 10.1061/(ASCE)EY.1943-7897.0000352
04 2018
検証 / 気象 Validation / Meteorology
Evaluation of Himawari-8 surface downwelling solar radiation by ground-based measurements
Atmospheric Measurement Techniques · 2018
AMATERASSが推定する日射量は、実際の地表面の日射をどこまで再現できているのか。本研究では、ひまわり8号を用いた地表面下向き短波放射量を、SKYNETの観測地点を中心とする地上日射観測と比較し、その精度と誤差要因を詳細に評価しました。全天候条件では全体として良好な一致を示す一方、2.5分間隔のような非常に短い時間スケールでは、衛星画素と一点観測の違いや雲の細かな変動による誤差が大きくなることも明らかになりました。また、晴天時にはエアロゾル、明るい地表面では地表反射率が重要な誤差要因になります。AMATERASSの日射量プロダクトの性能だけでなく、その限界と利用時に注意すべき時間・空間スケールを定量的に示した基盤的な検証研究です。
AMATERASSとのつながり ひまわり8号AMATERASS日射量プロダクトそのものを地上観測と直接比較・検証。
05 2019
社会科学 / 住宅エネルギー Social science / Residential energy
National-scale application of an activity-based residential building energy model using postcode-level census data
Building Simulation Conference Proceedings · 2019
住宅の電力・エネルギー需要は、気象条件だけでなく、家族構成、在宅時間、生活行動、住宅特性などによって大きく変化します。本研究では、郵便番号レベルの人口統計情報を利用した活動ベースの住宅エネルギーモデルを全国規模へ展開し、地域ごとに異なる世帯や生活行動を考慮しながら住宅エネルギー需要を表現する枠組みを構築しました。その際、空間的に詳細な気象条件を与えるデータの一つとしてAMATERASS由来の気象・日射情報が利用されています。衛星観測による日射量を、発電量の評価だけではなく「人がどこで、いつ、どのようにエネルギーを使うか」という社会・建築側のモデルへ接続した点に特徴があります。AMATERASSの高時空間分解能データが、自然環境の解析から住宅・都市エネルギーシステムの解析へ応用範囲を広げた一例です。
AMATERASSとのつながり 全国規模の住宅エネルギーシミュレーションにおける空間的に詳細な気象・日射入力として利用。
06 2020
GeoNEX / グリッドデータ GeoNEX / Gridded data
An Introduction to the Geostationary-NASA Earth Exchange (GeoNEX) Products
Remote Sensing · 2020
次世代静止気象衛星は、ひまわり8/9号やGOESシリーズのように、地球を数分から十数分間隔で観測できます。しかし、衛星ごとに観測方式や座標系が異なり、残留する位置情報の誤差もあるため、そのままでは複数衛星や他の地球観測データを統合して解析することは容易ではありません。GeoNEXは、これらの静止衛星観測を校正し、残留する位置情報の誤差を補正したうえで、共通の緯度経度グリッドへ変換する国際的なデータ処理基盤です。各画素の観測時刻や太陽照明条件も扱い、異なる静止衛星や極軌道衛星との比較・統合を容易にしました。この処理には、AMATERASSの開発過程で構築された位置補正・グリッド生成技術であるGeolocation Correction methodが用いられています。AMATERASSで実運用されてきた処理技術がNASA GeoNEXのデータ生成へ直接利用されたことを示す研究です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSで位置補正・グリッド生成技術として開発されたGeolocation Correction methodが、NASA GeoNEX L1Gプロダクトの生成に使用されています。
07 2020
電力市場 / 機械学習 Power grids / Energy market
Day-ahead Scheduling Method for Electricity Markets Using Neural Networks
計測自動制御学会論文集 · 2020
再生可能エネルギーを大量に扱う電力市場では、翌日の発電量や需要を事前に計画する必要があります。しかしPV出力には天候による不確実性があり、実績が計画から外れるとインバランスが発生します。本研究では、過去の市場取引結果からニューラルネットワークに翌日計画を学習させることで、大規模な最適化計算を毎回行わずに計画を決定する手法を提案しました。シミュレーションでは47都道府県を対象とし、AMATERASS日射量観測値から実際のPV発電量を計算して学習データを構成しています。従来方式では計算機資源の制約から扱える学習データ数に限界がありましたが、ニューラルネットワーク化によって多量のデータを利用可能にし、汎化性能と市場収益の改善を図りました。衛星観測が電力市場の意思決定モデルを学習する教師データとして利用された例です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSの日射量観測から実績PV発電量を作成し、全国規模の電力市場シミュレーションおよび機械学習に利用。
08 2021
日射予測 / 予報補正 Forecast correction / Solar irradiance
Post-processing correction method for surface solar irradiance forecast data from the numerical weather model using geostationary satellite observation data
Solar Energy · 2021
数値気象予報モデルによる日射量予測には、雲の表現などに由来する系統的な誤差が含まれます。本研究では、数値予報モデルの予測値と静止気象衛星から得られた日射量観測を統計的に組み合わせ、予報後に日射量を補正する手法を開発しました。大気状態や地域特性に応じて数値予報格子を分類し、予報値と衛星観測値それぞれの累積確率分布から変換関数を構築することで、予報モデル固有の偏りを補正します。日本全国での検証では、短期予報を中心に誤差指標の改善が確認される一方、季節や地域によって改善が限定的な場合もあり、手法の適用限界も明らかにしています。衛星観測を「現在を知るデータ」だけでなく、将来予測を改善する基準として利用した研究です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSの地表面日射量等を、数値予報の日射量を統計補正するための衛星観測データとして利用。
09 2021
植生 / 生態系モニタリング Vegetation / Monitoring
New generation geostationary satellite observations support seasonality in greenness of the Amazon evergreen forests
Nature Communications · 2021
アマゾンの常緑林では、植生の季節変化を衛星から捉えようとしても、年間を通じて雲が多いため、従来の極軌道衛星では十分な晴天観測を得ることが困難でした。本研究では、GOES-16/ABIによる高頻度観測からGeoNEXが生成した反射率データを利用し、アマゾン常緑林のNDVI季節変化を解析しました。高頻度で観測することで雲の切れ間を捉えられるため、従来の極軌道衛星よりはるかに多くの晴天観測を確保でき、広範囲で統計的に有意な季節変化を検出しました。これまで観測頻度と雲の問題に隠されていた熱帯常緑林の季節性を捉え、静止衛星の高頻度観測が雲の多い熱帯生態系を観測する新しい手段になり得ることを示した研究です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSで開発されたGeolocation Correction methodを用いて生成されたNASA GeoNEX L1Gプロダクトを利用した研究成果です。
10 2024
再生可能エネルギー / 広域分散 Renewable energy / Spatial variability
Solar irradiance variability around Asia Pacific: Spatial and temporal perspective for active use of solar energy
Solar Energy · 2024
太陽光発電の導入可能量を考える際、年間の日射量が多い場所を探すだけでは十分ではありません。雲によってどの程度激しく日射量が変化するのか、また離れた地域の変動がどの程度互いに打ち消し合うのかを知ることが、電力システム全体の安定運用には重要です。本研究では、AMATERASSによる10分間隔の広域日射量データを用い、アジア太平洋域の日射変動を空間・時間の両面から解析しました。日射場の空間的不均一性や、広域で同時に日射が低下する現象を評価し、季節ごとの変動特性を可視化しています。さらに既存の太陽光発電所の分布とも比較し、PVを広域に分散配置することで局地的な雲による変動を相殺し、合計出力を安定化できることを示しました。AMATERASSの「広域を同時に、長期間、高時間分解能で見る」という特性を直接生かした研究です。
AMATERASSとのつながり アジア太平洋域のAMATERASS高時間分解能日射量を、PV資源量だけでなく変動性と空間分散効果の解析に利用。
11 2025
炭素循環 / 生態系 Ecosystem monitoring / GPP
Modeling diurnal gross primary production in East Asia using Himawari-8/9 geostationary satellite data
Remote Sensing of Environment · 2025
植物が光合成によって固定する炭素量である総一次生産量(GPP)は、地球の炭素循環を理解するうえで重要な指標です。しかし、従来の極軌道衛星では一日に数回しか観測できず、猛暑時の昼間に光合成が低下するような日変化を十分に捉えることができません。本研究では、ひまわり8/9号による高頻度観測とAMATERASSの直達・散乱日射量を利用し、光合成有効放射とGPPの非線形な関係を考慮したモデルを構築しました。日本・韓国のフラックス観測による検証では、晴天時昼間や曇天時の朝夕に生じる従来モデルの偏りを改善し、さらに地表面温度を組み合わせることで熱波時に発生する昼間のGPP低下も捉えています。AMATERASSの日射量が、太陽光発電だけでなく、生態系の炭素吸収を時間単位で理解する基盤データとして利用された研究です。
AMATERASSとのつながり AMATERASSから提供されたひまわり8/9号の直達・散乱日射量等、およびAMATERASSの中間ファイルであるCEReSグリッドフォーマットを用いて、東アジアのGPP日変化モデルを構築しました。
掲載方針: AMATERASSの研究展開を理解するうえで重要な成果を中心に紹介しています。太陽放射量を直接利用した研究に加え、位置補正・グリッド生成技術や、それらから発展した静止衛星データプロダクトを利用した研究も含みます。